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見えてないところには
 
 打ち合わせが長引いちゃったりして、ちょっと遅くなってしまった帰り道。暗いけど、歩き慣れている家までの道には、すこしひんやりとした風が街路樹をわさわさと揺らしながらふいています。

  風好きな私には至福の一時。両腕を少し広げ、風を全身で感じながらてくてくと歩いてゆきます。ふと見上げると、かなりのスピードでたくさんの雲たちが流れています。

「空が暗いと雲の存在って気がつかないな。でも、空が暗いだけで昼間と変わらない空の世界が、そこにはあるんだよなぁ・・・」

  そんなことを考えていたら、数年前に夜の海に出かけたときのことを思い出しました。あのときも暗い海岸に打ち寄せる波や、暗くて見えない水平線の方から聞こえてくる波が岩にくだける音を聞いて、同じようなことを思ったのでした。“海の世界は夜でも休むことなく続いているんだ”と。当たり前のことなんですけどね。

 どんなに近くにあっても、自分が認識しなければそれは自分の世界には存在しないもの。毎日その前を歩いていたとしても、その存在に気がつかなければ一生出会うことはないんですね。流れている雲を見上げながら、この雲に気がつけてよかった、と思ったのでした。

"いったい私は、どれだけのことを認識できているのだろう。"
2000/06/28
 
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